妊娠7ヶ月の頃、実家の家族と旅行に行ってきました。
バケットリストとして「いつかやりたい」と思っていたことでしたが、やってみて本当に良かったです。
バケットリスト
バケットリスト。
訳としては、「死ぬまでにやりたいことリスト」です。
バケット(Bucket)とは英語でいう「バケツ」なのですが、イディオムでkick the bucket「死ぬ」というものがあり、そこからバケットリストは「死ぬまでにやりたいことリスト」という意味になりました。
私は手帳にバケットリストをいくつか書いてあります。
もうできたものもありますが、内容は
・家庭菜園をする
・出張撮影を頼んでみる
・紙すき体験をする
・日本三大花火を見に行く
・結婚式をしたレストランで子どもと一緒に食事をする
などなど。
その中で、
・実家の家族との旅行
というものがありました。
結婚をして新しい家庭を築き、「家族」といえば私と夫と子どもという状態になり何年も経ちます。
先に結婚出産をした妹もしかり。
実家に行くことはあれど、大体子どもと一緒です。
あとは実家の家族の誰かと買い物やランチだけ一緒にするとか。
父、母、私に妹。
その4人が全員揃いかつそのメンバーだけで過ごすことは基本的になくなりました。
バケットリストを色々書いていた時、ふと思いました。
実家の家族皆でまたどこかに旅行に行けるとしたらいつ、何歳くらいまでだろう。
私や妹の子どもが、夫とあるいは子どもたちだけで留守番ができる時期、もしくは義実家などでお泊まりできる環境にある時期。
両親が、旅行に耐えうる体力を持ち美味しいものを共有できる体でいる時期。
それでいて、皆の予定が合わせられるとき。
そうなると、意外と長くないのではと思えてきます。
先延ばしにしていたら、家族の誰かがいつ病気になったりして無理になるかもわからないのです。
「いつか落ち着いたら」のまま気づいたらいい時期を逃していただなんて勿体ない。
仕事と子育てをしているなか、ずっと落ち着く時期なんて来ないかもしれません。
今妊娠している私が出産したあとだと、数年間確実に実現が難しくなるでしょう。
何泊もするわけじゃないんだから、必要なのは費用と思い切り。
折しも、この年は父が定年退職になる年でした。
出産前に、定年退職祝いとして両親へのプレゼントの形で旅行をしよう。
そう決めたのでした。
バケットリストの作成にあたり、「最高の人生の見つけ方」という映画をみました。自分だと何をしたいだろうと考えるきっかけになる名作です。
スペシャルな旅行へ
そうと決まればと、妹と相談。
特別なものにしたくて、「憧れているが自分がする分には勿体なくて手を出さなさそう」ということで妹と解釈が一致した、「星のや京都」に行くことにしました。
「星のや京都」は、星野リゾートが運営している、京都嵐山にある高級旅館です。
街の喧騒を離れ、川の見える自然に囲まれた場所で静かなひとときを過ごす、といったところですね。
予約ページの値段に「うわぁ」といいながら、部屋を見ていきます。
どれも魅力的です。
流石人気の宿。
綺麗でお洒落で、洗練されていて。
ここに泊まるのかと思うとわくわくしてきます。
両親もこれは喜ぶぞ、と考えるとさらにわくわくします。
旅行がスペシャルなものになっていくのを感じました。
※公式サイトはこちらです。
両親の反応
この旅行を通して、とにかく両親の反応が嬉しかったです。
旅行をしようともちかけたとき。
星のや京都の宿泊と伝えたとき。
待ち合わせのとき。
宿に行く道すがら。
宿のなか。
滞在中。
ずっとふたりがうきうきしてくれていました。
旅館のあれこれにはしゃぐ母。
興味津々にあちこちを見てまわる父。
普段写真を撮らない父がいそいそと写真を撮るよう私たちにリクエストして、しかもそれが後ろ姿指定だったりして。
それがなんだか可愛らしく思えました。
旅行が終わってから家族のグループLINEでやりとりをしたときも、喜んでもらえたのがひしひしと伝わってきました。
星のや京都について
星のや京都は「上質のおもてなし」ということばがぴったりくるところでした。
船着場から船に乗って宿に向かうのですが、船着場にラウンジがあったり、船の乗り降りの際に雨が降っていたのですが毎回傘をさして下さったり。
到着するとオリエンタルな楽器の演奏があり、共有スペースは絵になる上品なしっとりとした美しさ。
石段や石畳が多くあります。
私は妊娠中でしたが、もしこの旅行が臨月に近い頃だと足元が見えづらいので歩くのに不安があったと思います。
宿の内装も、派手でないけれどいいものだと伝わるしつらえです。
大きな窓からは、山と川、鮮やかな緑が広がります。
そして星のや京都はほかに建物が近くに全然ないため、とても静かなんですよね。
川のせせらぎと鳥の鳴き声、葉擦れ。
トロッコ、雨音。
そうした音が心地よく流れていきます。
心が落ちつき、綺麗に洗われるような感覚になりました。
(コンセプトに合うように敢えてだと思うのですが、宿にはテレビがありません。家でテレビをよく観る両親はこの点のみ不満だったそうです。代わりにスピーカーがあり、音楽は楽しめるようになっています。)
宿の共有スペースとしてライブラリーラウンジというものがあり、それが個人的にお気に入りでした。
本やお茶を楽しめる場所となっていて、テラスのようになっている席は開放感があり爽やかな新緑を味わえます。
食事はどれも素敵で、少しずつユニークで凝っていました。
朝は野菜たっぷりでお出汁のきいたお鍋があり、それも美味しかったです。
私が妊娠中ということをお伝えしていたので対応メニューに。
お刺身が鯛しゃぶにかわっていたのですが、ランクダウンの感じがなくて嬉しかったですね。
カフェインがあるからと抹茶を使ったデザートも他のものに置き換えとなりました。
また、定年退職祝いということで、父のデザートにメッセージプレートをつけて頂きました。
嵐山観光(祐斎亭)
今回の旅行は旅館の宿泊がメインで、観光をたくさんする予定はありませんでした。
とはいえ折角の機会なので、私が以前ひとりで行って気に入ったところを家族に案内することに。
それは嵐山祐斎亭というところです。
染色アートのギャラリーなのですが、嵐山の景観を堪能できるスポットとなっています。
嵐山の木々を切り取る窓と色彩を映す机が、思わず息をのむ美しさを作り出す丸窓の部屋。
景色を鏡のように映し、筆で波紋を作ることで幻想的な瞬間を作り出す水鏡。
文豪の川端康成が逗留したという部屋。
事前予約をしてから訪れる場所ということもあり人でごった返すことがないので、ゆっくり座って絶景を味わうことができます。
祐斎亭の入り口手前は石段があります。
また、丸窓の部屋などは畳敷きの部屋のため、椅子でなく畳にぺたんと座ることになります。
足腰が不安な方はご注意ください。
私たちは家族皆で順番に写真を撮り、水鏡のいい映し方をああだこうだ言いながら試行錯誤して楽しみました。
ひとりでじっくり景色を味わうのもいいですが、皆で良さを共有して盛り上がれるのもいいですね。
※公式サイトはこちらです。
家族旅行の感想
私のスマホのカメラロールにおさまるたくさんの写真。
旅行で出会った色んな景色、泊まった部屋、食事。
そして両親や、家族皆の笑顔。
どれも、見返すと旅行の思い出のあれこれが蘇ります。
自分のこどもが話題の中心になることはほぼなく、でも途切れない会話。
実家ならではの、家族の友達や親戚、実家のご近所さんの話。実家で通じるキーワードに、昔からの話題や思い出話。
何も気にしなくてもいい距離感やリズム、呼吸。
最後にした家族旅行なんていつだったかよく思い出せませんが、ぎこちなさなんて微塵もなく。
普段は意識しないこの空気のようなものが、実家というものなのでしょう。
結婚してこどもを育てるようになってからわかる家族の意味や、大人になっても変わらず仲良くいられる尊さ、そして自分が充分に愛されていたこと。
新しい家庭を持っても、ずっと実家の家族の形はあり続けること。
変わらぬやりとりに、こうした実感が色を添えます。
泊まった場所がいい思い出を作り出した部分は大きいでしょう。
奮発しましたが、ここにしてみて良かったと思っています。
しかし、「家族で一緒の時間を楽しく過ごした」ということが1番大切だったと感じます。
次は親の喜寿のお祝いがいいだろうか。
少し時期があくから、節目でなくともまた集まってもいいなあ。
旅行の余韻を胸に、早くも「次」を考えるのでした。